ラプア 第2話

火の玉

幽霊のみんなが部屋から出て、一段落すると夕方になっていた。ポリュビオスから落ち着いたら城内を案内すると言われていたのを思い出した。

わたしの身の周りで起こったことは正直今でも信じられない。優しい?幽霊に会ったおかげで命拾いし、しばらくそこにお世話になることになるなんて。親戚の家でいじめられてひたすら家事や手伝いをさせられていた、自暴自棄になっていたあの頃からは考えられない。

ふと目に映った部屋の写真をわたしは凝視した。父親と娘と思われる二人が満面の笑みで写っている。もう両親が生きていたあの頃には戻りたくても戻れない、そんなことはとっくにわかっているのにわたしはまた涙を流してしまった。すると火のついた暖炉から急に、前に見覚えのある手の生えた火の玉が出てきて、

「ったく、ずいぶんと辛気くせー面で泣いてんなぁ嬢ちゃん。若ぇんだからもっとニコッとせー、ニコッと。」

とライトなダミ声で喋ってきた。わたしは

「アンタにわたしの気持ちがわかるか!」

と涙声での反論をした。

「わからん。わからんけどワイにも家族とかそういうもんはあったよ。もういないけどな。それと人、じゃなくて火の玉を呼ぶときはちゃんと名前で呼べ。ワイにはスタってれっきとした名前があるんだから。わかったか?」

わたしは気持ちを落ち着かせてから

「わかった。」

と言い、

「スタにも家族って、いるの?」

ときいてみた。すると彼?は

「そうそう、ワイには火の玉以外にも火花とか煙とかの家族がいてなー、ってアホか!人間に決まってるだろ!ワイにも生前は家内と子供が三人がいてな、寝てるとこに家に火ぃ付けられて気付いたらこんな姿になってたんだよ。でもな、ワイは笑い続けた。しょぼくれてたら離ればなれになった家族に失礼だと思ったからな。だから嬢ちゃんも笑え。昔っから笑う門には福来る、っていうしな。」

彼はライトな口調で言っているが、壮絶な過去だ。わたしもくよくよしている場合じゃないと思って彼に負けじとにっこりと笑った。

「そう、その顔だよ。若ぇモンは笑顔が一番だ。」

「それから嬢ちゃん、お前ポリィに何か言われたんだろ?早うドア開けて行った方がいいんじゃないのか?」

「え?近いんだからスタが開ければいいのに。」

「開けられないんだよ。ワイは触れたもん全部燃やす上に霊化もできんからなー。」

「そうなんだ。そういえばポリュビオスさんも言ってたけど霊化って何なの?」

「あー、なんていうか物には人間界のと霊界のがあってな、物ってもともとは人間界にあるんだけど霊界の奴らって人間界の物に触れることはおろか一切干渉できないんだよ。それで困る霊界の奴らが会得した、人間界の物を霊界の物に変える能力ってのが霊化ってわけだ。まあ、ワイにはできないんだけどな。」

スタのことと、霊化のことを教えてもらって「ありがとう」というと彼は照れ臭そうに頭を撫でていた。

ドアを開けると、ポリュビオスがすでに待っていた。

「お待ちしていましたよ。さあ、城の中を案内しましょう。」

わたしとポリュビオスとスタは三人で足を進めた。

拝啓、天国の父様、母様へ。このテーチ城にお世話になることになって初めての友達ができました。まだまだ寂しい気持ちはありますが、今までの生活に比べればそんなことはへっちゃらです。これからももっと友達を作りたいです。ビーより。

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