自由ー中場(JIYU-TYUBA)TAKE2

俺は、とある事情で、飛行機に乗っていた。その行先も分からず、俺は目の前で起こっていることのシュールさにただうろたえるだけだった。

「こんなトコで鮮魚さばいてんじゃねーよ!!」

TAKE2

俺の名は。おサルさんではない

「いや、旨いね。〆サバは。でも醤油が欲しくなるな。」

「残念だけど醤油はないね。でもまだいっぱいあるから好きなだけさばいてあげるよ。サバだけにね。」

ギャグがすこぶる生臭い。

「カノンもどうだい?…って光り物キライなんだっけか?」

「キライネ。アタシはタマゴとイクラじゃないと食べないヨ。」

ガキか。

「…ッテ、ホワッツ!?ナンテこった、燃料がイカれちまっタヨ!」

運転席の燃料メーターはわかりやすくゼロとだけ書かれていた。

「はぁっ?どういうことだよ!?」

「あっそういえば催涙弾の拡散機とこの機体の動力源って確か一緒だったような…

て へ っ 。」

いい歳こいた男のかわい子ぶった笑顔ほどイラつくものはないなと確信した。

「だったらそうこうしている場合じゃないだろ!このままじゃ、墜落する!」

「うわーっ!死にたくないっ!!逝きたくないー」

「お前いつまでプラカードで喋ってんだよ。人が死ぬノートの主人公の断末魔もおかげさまで緊張感が伝わってこねーよ!」

「誰に?読者?」

「…」

「わー、僕のー!!」

俺は珠生からプラカードを奪い取った。とりあえずこれで喋らないはずだ。そして由自はというと、なぜか不貞腐れている。

「サバ…サバ…」

「まずは身の安全を確保してから言え!!」

にしてもあの時の態度とはエライ違いだな。良く言えば憑き物が落ちたというか、悪く言えば覇気がなくなったというか。

「それについては僕から説明しよう。」

もう手に負えんわ。

「ケイ(由自)は今まで厳しい家庭で過ごしてきたあまり、その反動によっていくつかの人格に分かれてしまった(らしい)んだ。一人は若くして政治家の上層部にいた時の「抑えられた」人格、そしてまた一人はケイがもともと抑えていたものが「爆発した」人格、っていう風にね。」

ってお前はどっからプラカード出してきたんだ!お前の体内にはプラカード作る器官でもあんのかよ!

「グウウウウン!」

「マズイ!ヤバそうな音がしている!このままじゃホントに墜落しかねないぞ!」

「おっ、パラシュート見っけ。」

「マジ!?これなら…」

「一人分だけしかないけど見つけたからには俺のものだよね?んじゃっ、みんな達者でな!」

ケイはそそくさとパラシュートをバサッ!と開いて飛行機から降りた。

「どちくしょおおおおおおおい!行くなアアアアアッ!!」

「コウイウ時はアタシに任セテ!フッ!」

進藤さんの吹き矢がケイのパラシュートのど真ん中に命中した。

パラシュートはプシュッ。プシュルルルシュルルル!という情けない音を発して墜落した。

「うわああああああああ!!」

「何したの?」

「吹キ矢ネ。」

「すごい勢いで回転しながら落ちていったけど大丈夫なの?アレ。」

「マア三十分もすれば帰ってくるッテ。」

扱い雑すぎない?

「そんなことよりも自分たちの危機回避が先だよ。」

「トリアエズ機体の高度を上げればなんとかなりそうネ。ミンナ、これを使ッテ!」

うちわ。

「こんな時にふざけてんじゃねーよおおおおおっ!!!」

「マアマア、目的地はすぐ真下ダシ。」

「は?ただの更地じゃねーか。」

「着陸サセテから普通に拠点まで走るノ!」

「何せ普通の場所で着陸してたら動管省の目をかいくぐれないしね。」

「なるほど。で、燃料ないのにどうやって着陸するんだ?」

「え?」

「は?」

「っていうのは冗談で、緊急用の動力源があるから大丈夫。ポチッとな。」

足元から何かが出てきた。これは、ペダルだろうか?…間違いない、ペダルだ。まさか人力で動力源を確保するってことじゃないだろうなぁ。

無理だろ。チキショウ、こんなのに巻き込まれるぐらいだったらもう一度ムショにお世話になった方がよっぽどマシだった。まだピッチピチの二十代、未婚、彼女もいない。いたこともない。しかもすでに前科一犯。

「こんなんで俺の人生棒に振ってたまるかぁ!シャアオラアアアアアアァァァァァァッ!」

俺は全力でペダルをこいだ。

「そんなに頑張らなくても十分なエネルギーを供給できるよ。大丈夫。僕の設計だよ。」

先に言えよそういうのは。シリアスに落胆してた俺がバカみたいになってくるから。

「オッケー、これでとりあえず着陸のためのエネルギーは供給されたゼ!今カラ着陸するヨッ!」

どんだけ高性能なんだよこのバンは。飛行機になったり燃料切れても人力で飛んだりステルス機能付いてたりさ…。いや、あえて言おう。

フィクションだからな!

「ドズウウウウウン!ガガガガガガガガガッ!」

着 陸 失 敗

「…いてて。明らかにヤバそうな音したけど大丈夫なのか?」

「うーん、まあ機体の損傷もほぼないし、これなら十五分もあれば走行可能な状態までなおせそうだ。」

マジかよ。

「ガチャガチャ、ガチャッ。」

「よしっ、これでひとまずは大丈夫そうだ。今回の修理は35回目だからこのバンをババンババンバンバンMk.36と命名しよう。」

珠生のドヤ顔とともにプラカードがキラッと光った。直されたババンババンバンバンMk.36とかいうふざけた名前のバンはあっさり動いて、二十分ほど道なき道っぽい道、つまりはただの道を走って住宅街にある目的地に着いた。

どう考えても動管省に見つけてくださいと言っているようなネオンサインが特徴の建物だ。クリスマスシーズンの民家でたまに見かけるハイレベルなヤツに近い。

「ト~ちゃ~ク!」

「ここが僕達の拠点、並びに秘密基地のぶっ壊れ荘だよ。動管省に見つかって爆撃されてもも大丈夫なようにとにかく頑丈に作ってあるんだ。」

名前。

「トリアエズ中に入って入ッテ。」

俺は、ごく普通のシェアハウスの大部屋のような場所に案内された。

「中はきれいだな。今までの感じだとゴミ屋敷を想像してたけど。」

「オイオイ言うな。でもさぁ、この家には「管理人」がいるからそういう雑務は全部サポートしてくれるってワケよ。うーん、ここにいないってことは自室にいると思うけどな。ま、とりあえず部屋の鍵を渡すから入っとけ。」

「由自!イツノマニ松葉杖ニ!?一体誰ガ!?」

お前じゃい!

「全身骨折だってさ。全治一話だって言ってたからまあ次の話になれば治ってるだろうな。」

全治一話って何だよ。それはそうと渡されたのは五号室と書かれたプレートが付いた鍵だった。

五号室と書かれた部屋の鍵を開けて中を見てみるとユニットバスと、ベッドとクローゼットとタンスが一つと小さな腰高の窓が一つある六畳間の部屋が一つあった。小さな冷蔵庫もある。

というように一通り見渡したところで、いきなり

「オォーーーーーーーーーーイッ!」

と耳をつんざくような叫び声が聞こえた。

俺は呆れつつも「はいよ。」とだけ返事をした。

「モウちょっとしたら大部屋に来てもらってもイイ?ナアニ、ちょっとみんなで話し合うだけサ。」

この滲み出るアメリ感は進藤さん以外の何者でもない。

「わかった。

…あのさ、突拍子もないこと聞くけどさぁ、何で俺だったんだ?俺は人助けとか運動能力とかには自信があるけど、別に頭がいいわけでも人柄がいいわけでもない。それに礼儀知らずで生意気なモンだからさ、正直違うっつーかYouTubarやってた奴だったら俺より適役な奴なんて山ほどいるだろ?って思うんだけど。」

「サアネ、わかんないヨ。由自ガ決めたことだしネ。ンデ、アタシはその判断を信頼してル。ソンダケ。」

時計の針は午後六時を指していた。俺は言われた通りに大部屋に移動した。大部屋には由自と進藤さんと管理人と思われる女性が一人。

「自己紹介は後でやるから、とりあえず飲み物選んで?」

「何があるんだ?」

「水かウーロンハイかラムネがありますぅ。」

「何だその微妙なチョイス!」

つうか渋谷や原宿の服屋でありがちな「すっごくお似合いですぅ↑」みたいな口調やめろよ、ウザったい。水を選んで席に着いたらすぐに珠生が来た。

「ごめ~ん、待った?」

「いや、私たちもさっき来たところだから~。」

とデートの待ち合わせをしていた恋人のような茶番が終わり、会議が始まった。真ん中にテーブルを構えて、その周りを囲むようにして俺、管理人、由自、珠生、進藤さんという並びで座っている。

「とりあえず新しいメンバーもいることだし彼のためにも自己紹介から始めようか。」

という珠生の提案により、「読者への登場人物のおさらい」も兼ねて自己紹介をすることになった。

「このシェアハウス、ぶっ壊れ荘の管理人をしている「アン」こと八神 編夢(やがみ あむ)ですぅ。イコイの経済担当です!年は27歳で主に雑務と動画の編集と皆への金貸しをやっていますのでよろしくお願いしますぅ。」

年上ェ!…ってことは他のメンバーはもっと年上って可能性もあるよな~。どーしよ、お前呼ばわりしてたの。後で謝るしかないな。つうか金貸しって何だ金貸しって。

「彼女の家系は代々経済学に精通していて、毎日数千万円ってレベルのお金をやり取りしてるんDA☆すごい日には一億以上も稼ぐし、ヒドイときには一瞬でウン千万が吹っ飛んだりもするんDA☆違法YouTubarにはGoogloから収入が入らないから、彼女がイコイチャンネルの収入源なんDA☆」

某キチ◯イアニメのナレーションはよせ。

「一号室の「ケイ」こと場中 由自(ばなか ゆうじ)、28歳。俺達が運営しているイコイチャンネルで、出演者と企画担当だからまあ何かあったらよろしくってことで。」

やっぱり年上だったァ!

「そうだ、映叶には言ってなかったけどなるべく敬語はなしな。それと相手を呼ぶときはなるべくニックネームで呼ぶこと。緊張せずライトな雰囲気でやってきたいからな。」

俺はうんと返事をした。

「三号室の丸録 珠生(まるろく しゅう)です。「TAMA」って名前で主に動画の撮影をしています。イコイの技術担当、27歳です。よろしく。」

やっぱりどうしてもプラカードを介しての会話は慣れない。

「アタシは四号室の「カノン」こと進藤 奏音(しんどう かのん)、由自と同じ28歳デース!担当は医療と、由自と同じく出演者やってるからよろしクー!」

確か日本に来てから三か月ほどって言ってたっけ。今はまだまだだけどあと数カ月もすれば日本語のアクセントとかは子慣れてくるだろう。

ところで次は俺なんだけど、聞いているうちにどうしても気になった事があった。

「そういえば、二号室の人はいないのか?」

「え…?あ、うん。諸事情で欠番になってるのよ。」

何か聞いちゃいけないことだった気がしたので、ごまかそうと早急に自分の紹介を始めた。

「五号室の去川 映叶(さるかわ えいと)です。26歳です。えっと、体を動かすことが好きです。このチャンネルで何をすればいいのかはわからないけどとにかく頑張ります!」

「じゃあ映叶くん、この三つの中から選んで。

1:出演者

2:出演者

3:出演者

だけどどれにす…」

全部同じじゃねーかァ!完全に出演者しかやらせる気ねーじゃん!

「それと、名前は前前前世的にサル…やっぱりなんでもないや。どうする?」

今完璧にサルって言いかけてたよな、絶対!…まあいいや。さてと、名前どうすっかなぁ。と、いろいろスカした名前を考えようとはしたものの、ガラじゃないからか何一つ思いつかなかったので普通に名前通り「エイト」にした。

こうして俺は「エイト」として新たにYouTubarとしての道を歩むことになった。