ラプア 第7話

上昇

「ここですか。フリンジ様を買ったという下衆な方が居る所は。…なるほど、ビリデと言えばここら一帯では悪名高い商人ですね。なんでも人身売買を生業にしているとか。これは何としてでも救出しなければなりません。」

…手遅れになってしまう前に。

「何せテーチ城並みに規模の大きな屋敷でしたからね。警備もたくさんいたので見つからないように進むだけでも精一杯なほどでした。屋敷に侵入してから私はビリデ本人のいる部屋を目指しました。こんなに大きい屋敷で部屋をしらみつぶしに探しているようではすぐに警備に見つかってしまうと思ったので、本人を人質にして探りを入れようと考えたのです。

裏のマンホールから通気口に入ってひたすら上昇すると、屋敷の三階の天井に出ることができました。屋敷の風貌から察するに、この上の四階にビリデの部屋があると考えられたので、廊下で近くを歩いていた警備員から服を一式拝借しました。」

「何したんだ?」

「秘密です。

四階に上がると、明らかに他の物とは違う程豪華で立派なドアがありました。私はドアの隙間から中をのぞいたのですが、中には誰もいませんでした。幸い、部屋の鍵は開いていたようだったので、中から待ち伏せすることにしました。それにしても広い部屋で、この部屋だけ見れば、かつて見た王宮にも引けを取らないほどのものでした。床には一切ほつれのないレッドカーペットが敷かれ、ダイヤモンドと純金がふんだんに使われた部屋全体を照らせるほど大きなシャンデリア、刃先の先から先まで精巧に作られた宝剣、純金製の特大ベッド、ビリデと書かれた金の刺繍が特徴の天幕、もちろんこれだけではありませんでしたが、こんな部屋に一人で住めるほどの経済力を人身売買で成立させていることに私は憤りを覚えました。一刻も早くフリンジ様を助けないと…いや、それだけではいけない。こんな商売は終わらせないとただのいたちごっこになってしまう。ここにいる売られてしまうであろう人達全員を助けないといけない。そう思いました。

しばらくして、醜い足音が近づいてきました。私は先ほどの宝剣を手に、ドアが開いたところを狙って解放させるべき人たちの居場所を吐かせることにしました。」

「コヅン、コヅン…」

「ガチャァッ、

バタン。」

「動くな!」

「ウッ!」

ビリデは一言だけ発した後はすぐに落ち着きを取り戻していた。

「単刀直入に言う。貴様が売りに出す人達を開放しろ!」

「ほう、ソナタの身内でもいるのかな?」

「もう一度言う、貴様が売りに出す人達を開放しろ!さもなくば、この剣が貴様の喉を貫くぞ!」

「…分かった。まあ待て。」

「カチッ!」

「おい!今何をし…モゴ…」

「ソナタのような輩がいるからな。ワタシはプライベートでも護衛をつけているのだ。」

私はとっさに腕を伸ばそうとしましたが、その鋭い刃先はすんでのところでビリデの喉元に引っ掛かりませんでした。

「う…意識が…遠のいて…」

「目覚めた場所は、真っ暗な部屋の中でした。そして何より、暑い。その原因が火だったことは、すぐにわかりました。しかし、手足が縛られているうえに、ここがどこかはわからない。そもそもここが本当に部屋の中であるかすらもわからない。そんな中でも暑さは容赦なく、ジリジリと私に近づいてくる。囲い込んでくる。炎がだんだん強くなってくるのが分かる。そのせいで、ゼェゼェと呼吸が荒くなり、体力も消耗されていった。その過程で、外から僅かな光が差し込んできたので、私は最後の力を振り絞り、そこへ全力で転がり込もうとしたその瞬間、炎が急にゴオッとうなりだして私の両足を襲いました。外へ出て真っ暗な部屋の正体が、人里離れた小さな小屋であったことが判明しました。しかし、それと同時に焼けただれて使い物にならなくなった私の両足が見えました。

結局、フリンジ様を救出するどころか両足まで失ってしまった私は、ひたすら無力さを感じただけでした。」



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