自由ー中場(JIYU-TYUBA)TAKE6

「ムカキンT・V~、エ・ブリィ・デイ!」

「はっはっはっ!やっぱムカキンはおもしれ~なぁ。」

「ヌッ、エイトよ、何を見ているんだッピ?」

「うっ、うわわっ!」

「ドシ~ン!」

ベッドから落ちた俺は、何かかすかな視線を感じた。…まあ多分気のせいだよな、きっと。

TAKE6

この先動画投稿をするつもりなら何らかの差別化がないと生き残れないと思え

「…痛てて。何だピョコルか。びっくりした。」

「拙者がエイトと相部屋になってからエイトがベッドから落ちたのは五回目だッピ。まあ、その内の二回はエイトの寝相の悪さゆえのモノだったけどッピ。」

「寝相が悪いのは否定しないけどよ、何か今まで一人部屋に慣れてたから誰かが一緒に居んのって落ち着かねーんだよなぁ。」

「なるほど、独房という名の一人暮らし、か。」

「やかましいわ!別に悪いことして捕まった訳じゃねえっつーの!」

「犯罪では、あるがなッピ。」

「…まーな。」

「ところで、誰の動画を見ていたのだッピ?」

「ムカキンって知ってっか?ボイパが上手で大人にも子供にも大人気なYouTubarなんだけどさ、最近はイヌを飼い始めたことでも話題になったな。」

情報が古いッピ!!

「でもさ、今じゃムカキンを始めとしたほとんどの人気YouTubarが違法YouTubarにされてるんだからなぁ。なーんか、ヤな時代だよな。」

「そう言うでないッピ。拙者達はそのために闘っているのだろう?」

「そりゃあ、そうなんだけどな。…ところでさ、ピョコルはYouTubaとか見ないのか?」

「見るッピ。特に好きなのはおわりかかりちょーだッピ。」

「おわりかかりちょーかぁ。俺ほとんどおわりかかりちょーの動画見たことないんだよなぁ。ちょっと見てみっか。」

「おわりかかりちょーの動画ならこれがオススメだッピ。」

「へーっ、どれどれ。」

「あぁ、もう終わりだ。

もう五年もしないうちに定年退職なのにこんな三流の中小企業で係長という中途半端な立ち位置だなんて…

若いころは良かった、会社の売り上げを伸ばそうとするべく活気に満ち溢れていた。

それがいつからだろうか、些細なミスをするたびに落ち込んで、同期や後輩にも追い抜かれ、仕事に対する情熱も失って、結局積み上がったものは年齢だけ。

なんて情けないんだ…」

「終わりの、係長じゃねーかアアアアアアアアアアアッ!」

「どうだッピ?」

「どうだッピ?じゃねーよ!何だこの今にも身投げしそうなバーコード頭のおっさんは!」

「ぶっ飛んでるだろう?いろんな意味で。」

「っせーよ、ぶっ飛んでるのはコイツの頭髪だけにしとけ!」

「ねぇ、ちょっとうるさいんだけどぉ。」

「げっ、アン。何で俺の部屋に?」

「マスターキー。エイトの叫び声、大部屋まで筒抜けでぴえん。」

「マジかよ。」

だからっつってノックもせずに部屋ん中入ってくるかよ。ったく、ウチの管理人はこれだから困る。

「聞いた感じおわりかかりちょーの話してたでしょ。私も結構見てるわょ。」

「え?あんな哀愁漂いまくりで見てるだけで鬱になりそうなのを?」

「んー?それってぇ、おわりかかりちょーの自虐PVでしょ。いつもはライトな営業マン風の恰好で面白い動画出してるわょ。…鼻フックとか。こんなPVを最初に見せるなんてのは縄跳び初心者にゼロ戦やらせるようなモンよぉ。」

残念ながら俺の地元ではゼロ戦じゃなくってつばめって名称が主流だったが、さっきの動画は初見の人が見るべきじゃない事だけはよくわかった。

「さてと、今日は前々からケイが温めてたYouTubarコラボ企画を始めるわょ。」

「そーいや何件かとコラボ交渉してたな。やってくれるとこ、見つかったのか?」

「えーっとぉ、コレよ!」

「カチッ!」

アンはそのチャンネルをクリックした。

「い、いろはTV…って言えば国内トップ合法YouTubarのひとつじゃん!!違法YouTubarとコラボなんかしたら捕まるんじゃ…」

「その辺は心配ないわょ。法に触れるのは違法YouTubarが動画を投稿する事にあってぇ、その存在自体には関与しないもの。つまり違法YouTubarの存在自体は罰せられないってコト、キリがないからね。それに、基本的には合法YouTubarが許可すれば動画の投稿もできるからやらない理由もないしぃ、それでも念には念を入れといて彼らとは動管省の目をかいくぐれる場所で落ち合うことになってるからぁ、言い忘れてたけどもうじき出発するわょ。」

「よしっ!今からみんなで撮影場所に集合だッピ!」

「オー!!!」

「ういーっす。」

「デラレナイ。」

クローゼットの中からカノンが、腰高の窓をまたいでケイが、ベッドの下からプラカードが出てきた。どうしてか最初から俺の部屋にいたようだ。

「ベッドの下はたいして面白くないな。それよりもこっから出る方法を教えてくれないの豚w」

ダ…ダメそうだ。