アスノソラヘ 第3周

「はあっ!?陸上同好会が、存続ゥ!?」

「ったりめーだ!あの勝負だって雷さえ落ちてなければ俺の勝ちだったもんな!」

「いや、確かにペース上げてたけどあれじゃ抜けなかったろ、さすがに。」

「いいんだよ、細けェこたぁ。とにかくこれで陸上ができるようになるんだからな!ってワケで改めてよろしくな、安曇!」

「何で俺まで頭数に入ってんだっつの!」

第3周

ケツイ

「アズミンホントは陸上やりたいんだろ?それならそうとはっきり言ってくれればいいのに。ほら、早く部室行こうぜ。」

ライディーンが俺の腕を引っ張った。腕を思いっきり振ってもビクともする様子はなく、あっさりと引きずられてしまった。

「ちょ待てよ!オイ!しかも何ちゃっかりアズミンとか意味不明なあだ名付けてんだよ!!

俺は絶対入部しねーからな~!絶対絶対に入部しねーぞ~!!」

校舎中に俺の情けない声が響いてしまった。腕を引っ張られて情けない声を上げた俺を見て笑う奴らがちらほら、憐れみの目で見る奴が大半だ。まあ入学式早々にあれだけのことをやらかした奴に絡まれてるとなれば当然っちゃ当然だが。

部室

「ああ、君たちか。よく分からないけど同好会が存続するって虹から通達が来たよ。」

だから何で相変わらず俺まで頭数に入ってんだよ。俺やらないって言ってたよな?確か。

つーか前来た時もだけど時雨さん何かテンション低いな。何かと残念な見た目も相まってアーメンみたいな雰囲気出てるし。

「時雨先パイ!いや、アーメン先パイ!とにもかくにも練習しましょうよ、練習!」

オイオイ、よくもまあ先パイをあだ名呼び出来んな。しかもなぜか知らないけどアーメンかぶってるし。

「あ、アーメンって僕のことかい?」

「そっす。」

「そうか、…クション!

あは、あはははははははは。」

「うわああああ、くしゃみしたら時雨先パイが壊れたああああっ!?」

「良いって事よ、好きに呼んでくれて。んじゃっ、練習始めっか!」

情緒不安定じゃねーかこの部長。

「アーメン先パイは種目何やってるんスか?」

「クション!…ああ、僕は3000mSC(3000m障害)だよ。まあ、この通り同好会じゃあまり記録会とかにも出られないからね、やれる機会はかなり限られちゃうんだけど。」

「えっと、3000m障害って確か大きいハードルとか水の入ったところを跳んだりする奴ですよね。なんかテレビでしか見たことないんですけど危険そうで、あんなの高校でやるんですか?」

「高校生以上の記録会なら大体やるぐらいにはメジャーだよ。ちなみに水が敷いてある場所は水濠(すいごう)って言ったりするね。ちゃんと浅いところに着地しないと水に足を持ってかれてロスになるんだ。」

「つーかフツーに総体でもやるぞ、アレ。」

「そうなんだ。」

「…総体か。部なら出れるけど、同好会の僕達には一生願ってもかなわない舞台だよ。そもそも同好会じゃ一般の人たちも出られる市営の記録会ぐらいじゃないと出られないし、3障(3000m障害の略)なんかは水濠の練習でさえもわざわざ市のトラックを借りないとできない。もし部だったら、同好会じゃなかったらあの大きいハードルだろうと水濠だろうと跳び放題だったよ、フフフ。それに短距離用のタータン(陸上トラックでよくあるゴムでできた地面)も使えないからって理由で来なくなった部員もいるしね。」

今度は時雨先パイのテンションが下がってきた。

「陸部の使ってないときに借りるとかってできないんですか?」

「陸上部内でさえもレギュラーからほど遠く、まともな練習ができない奴らがいるんだ。同好会なんかに回ってくるはずなんてない。フフフ。」

いやなんかもう時雨先パイから負のオーラが漂いすぎて怖いんだけど。何?な、え?どう扱えばいいの?この先パイさぁ。

「まあ今日は諦めてジョグにしようか。今日はというよりいつもの事だけど。」

「うっす。」

「タッタッタ。」

「なあ雷電、いやライディーン。何で俺まで走らされてんだ?」

「そりゃあ陸上の良さを分かってもらえそうな奴を探してたからだよ。俺が昨日走って通学してたらよさげなお前、アズミンが通りかかったからな、声かけたってワケだ。でも実際問題アズミンが陸上に、特に長距離に向いてるってのは事実だぜ。なにせその鍛え上げられた足、多分サッカーか何かやってたんだろうけどそれにしてもなかなかのモンだぜ。ここまでのヤツは陸上やってる奴にも引けを取らねぇな。」

褒められて悪い気がしない、ってのは昔っからの俺の悪いクセだった。サッカーもそれで始めたし、小学校の頃に塾に通っていたのもそのせいだ。でもって全部が全部中途半端だったし、それについて楽しさを感じられたこともあまりなかった。陸上もどうせ同じ事だろうと思っていたけど、それがただの思い違いであってほしいと心の奥底では思っていた。ホンキで何かをやろうとしたことがないまま中途半端な人生を送るのも悪くはねぇって思ってるけど大人になるまでに何か一つ、夢中になってホンキで打ち込めるものを持っていたいってのが正直なトコロだ。ならよ、いっその事ホンキで、陸上部以上に陸上やってみるってのもアリかもしれねぇな。…キツイのホントはすっごくすっごくすっごくイヤだけど。

「…やるよ、陸上。正直こういうキッツイのはサッカーでうんざりしてたはずなんだけどな。」

「マジでか!?つってもホントはほぼほぼ入ってくれるたぁ思ってたけどな。まあ決心がついたようで何よりだな。」

「んだよ、それ。何かいい気分しねぇな。」

「まあいいじゃねぇか、そろそろ三十分経つ頃だし引き返すか。」

一方そのころの部室

「ブッ、ブッ!」

「ん?ケータイか、どれどれ…

珍しい、こんな三人しかいないさびれた同好会に合同練習を申し込んでくる学校があるなんて。何々、私立楽天寺高校か。やっぱりこういうのって当てはなくっても探してみるモンだな。」

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