アスノソラヘ 第4周

「よし、二人共帰って来たな。」

「どうしたんですか?そんなに改まって。」

「実はな、…」

「まさか、存続取り消しとか…?せっかく入部の決意固めたのに?」

「違うよ。何とね、他校との合同練習が決まったんだ。」

「な、なんだってー!?」

第4周

イザコザ

「まじっスか、アーメン先パイ!いつの間にそんな申請とかしてたんスか!まったく、先パイもスミに置けませんなー。」

おちょくってる、おちょくってるよコイツ。っていっても意外なことは意外だ。何せこの陸上初心者の俺といろいろと残念なアーメン先パイとライディーンとかぬかすバカと天才は紙一重を具現化したような奴との三人しかいない、部活として認められていないこの陸上同好会と一緒に練習してくれるトコロなんてのはまあないだろうと思っていたからな。

「練習相手は、楽天寺高校だ。」

「ら、楽天寺高校!?…知らん。」

「俺も正直知らないです。」

「まあ無理もないな。こっちは千葉県であっちは群馬県だしな。うちは部の方はだいぶ名が知れてるからあっち側は知っていたようだけどこっち側は何せ記録会にすらまともに参加させてもらえないようなしけた同好会だしな、県外の高校なんてよっぽどの所以外は知らないもんだ。知る機会がないしな。」

「ってことは俺みたいな初心者でもなんとかなるぐらいには無名ってことですよね、よかった。」

「いや、あっちじゃ結構有名なところみたいだ。うちの部程じゃないけど毎年数人はインターハイに出てるぐらいには強いらしいし。」

「え”!?」

驚いた俺の肩をライディーンがポンと叩いた。

「強く、生きろよ。」

何だよその励ます気の全くない励ましは!しかもその絶妙な間が妙にイライラを誘発してくるし。

「ところで安曇君だっけ?は何の種目やるのかは決めているのかい?」

「いや、まだ…」

「5000mやりたいって言ってました!」

「なるほど、安曇君は5000と…」

「お前ええええええっ!!フザッケンナよ!

先パイ、今のなしです。まだ決まってないんで。」

「いや先パイ、コイツに5000やらせましょうよ。コイツ距離長い方が向いてますって。」

「やだっつってんだろが!距離なんか長ければ長いほどキッツイんだろ!?それで5000って、イッチバンキッツイじゃねーか!」

「…なるほど、だとするとそれは大きな勘違いだな。」

「え?どういうことですか?」

「まあ聞いてくれ。まず陸上で最もキツイのは400mまたは800mと言われている。これはなぜかって言うと運動の動力源の境目だからだ。」

「はあ。」

「人間の動力源にはアデノシン3リン酸と糖と酸素があってな、糖と酸素の切り替えにあたる部分が特に身体的負荷が大きいから中距離はキツイんだ。逆に長距離は酸素を送り続けられればいいだけだから肺さえ持てば楽になる。」

何だ?ワケが分からなすぎてアタマがパンクする。

「いや、よく分からないですけどそれがムリだからキツイんですよ…」

「まあーやってみろって。しっくりこないなら種目変えればいいだけの話じゃんか。」

「種目が多いからしっくりこなければ安易に変えられるってのも陸上の魅力の一つだね。」

「…わかりましたよ、お試しですからね。走ってみてイマイチだったらすぐ変えますよ。」

「アズミンには向いてると思うんだけどなぁ。」

「話を戻すけど合同練習は一泊二日だ。出発は明後日の朝だから木曜と金曜日は公欠だ。集合場所は現地のトラックだからはい、しおり。色々まとめておいたからこれ見て行くといい。」

「ありがとうございます。でもこんな仮入部期間から泊りがけで合同練習とかって、その間に入部希望者いたらどうするんですか?」

「…クション!あは、あははははは!こんな三人しかいないショボい同好会に入部希望者なんてよっぽどのもの好き以外来るわけないさ!だから大丈夫!あーっはっはっは!」

アーメン先パイ琴線に触れるたびにこうなるのか、扱いづれぇ。

「あーっはっはっは!…クション!えっと、今日の練習は以上、解散。」

「ありがとうございました!」

さて、楽天寺高校の最寄り駅まで着いたぞ。新しい靴(一万円ぐらいの底が厚めのヤツ)も買ったし、ジャージ、ウインドブレーカー、ベンチコート、長野の寒さ対策はバッチリだ!…ここ来て正直ベンチコートはやりすぎな気がしたけど。

「おーい、安曇君。」

「アーメン先パイ!」

「どうやら同じ電車に乗っていたようだね。」

「何もなさ過ぎて逆に風景が結構新鮮に見えましたしたね。」

「さてと、ライディーンは先に行ってるって連絡入ってたから一緒に行こうか、ここからはもう近いみたいだし。あと虹から連絡が来たんだけど、トラブル起こしたら廃部だってさ。」

「はいっす。…アイツの事だから何も問題起きてなきゃいいけどなぁ。」

「ザッザッ。」

「あっ、あそこに見えるやつがそうだな。」

「…なんか聞こえません?なにか言い争う声のような。」

「嫌な予感がするな、確認してみようか。」

「タッタッタ。」

「だぁからよ、こっちは客なんだからアップの時ぐらい自由にトラック使わせろっての、ハゲ!」

「るっせーってのオレンジアタマ!こちとら金、払ってんだ!こっちが優先に決まってんだろって!」

「や、やめなさい二人共。」

「お前は引っ込んでろ!」

やっぱすでに一悶着起きてるー!!

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