C.A.N JOB4

「プルルルル。」

「はい、こちら株式会社カリス。…はい、…はい。」

「ガチャッ。」

「シゴトか?カリスマ。」

「ああ、やっとだよ。」

「よしきた、これでやっとマトモなメシが食えるゼ☆」

JOB4

罪の償い

「ピンポーン。」

「はい。」

「さっきのヤツか?」

「多分な。」

「えっと、先ほど電話した上新 樹希(じょうしん いつき)です。」

「どうぞ、入って下さい。」

依頼に来たのは俺より二世代ぐらい年上(おそらく二十代後半ぐらい)のスーツ姿の礼儀正しそうな男性だった。どんな仕事をしているかは分からないけど、スーツである以上はサラリーマンとかの畏まった職種だろうと思っていた。

「お客さん、とりあえずここ座って。」

「…どうも。」

「オイオマエ!シゴトは何をやってるんだ?」

キャンがしゃしゃり出てきた。

「おいキャン!客に失礼だろ!」

「良いじゃねーか、ここは言わば人生で行き詰まったヤツらの駆け込み寺みてーなモンだからな。てなれば坊さんはオイラだし、何の問題もねー。」

「え…?イヌが喋った…?」

「イヌじゃねー!オイラはキャンだキ・ャ・ン!」

いや名前とかそういう問題じゃなくね?

「うーん、分かりました。」

了承した!?

「それと私、実はお笑い芸人をやってまして…」

「お笑い!?」

キャンは半ば「はいはい、どーでもいーや。」みたいな風に目の色を変えた。お笑い芸人だったからスーツを着ていたというギャップには俺も俺で驚きはしたが、その世界で正直期待できるような器じゃないんだろうというのは最初に電話で話をした時点でなんとなく感じていた。

「フレッシュマンいつきって名前で活動してるんですけど、知りませんよね?」

「知らん。」

直球で言うなよキャン。

「ネタはこんな感じのをやってるんですよ。

(ナレーション)

俺はとある闇企業の新人だ。今日はとある組織とのとあるブツの取引がある。そのため俺はとある埠頭のとある倉庫で待機中ってワケだ。」

「もう地雷臭がす…モガ。」

「だあって見ろって!」

「(フレッシュマン)

しかし、こねーなー(棒)。遅れられるとこっちのリスクがデカくなっちまうんだって(棒)。」

「(ナレーション)

動くな!」

「(フレッシュマン)

何!?警察か?(棒)」

…見るに堪えねぇよ。むしろよくこんなんで事務所入れてくれたな。

そんな中、寝起きのチャームとエイブルが階段から降りてきた。

「オイ、もう昼の11時だぞ。」

「いいじゃないの、どうせ客なんか私みたいに本気で切羽詰まってた人ぐらいしか来ないんだから。」

「その客が今おいでなんだけどなぁ。」

チャームは無視して洗面台の方に向かった。彼女も年頃だし、今のは反抗期とかそんなものだったのだろうと割り切って何も言わないことにした。

「…今の子、誰ですか?失礼ですが兄妹には見えませんし、親子にしては年が離れなさすぎな気がしますし…」

「ああ、元依頼人なんだけど身寄りがなかったから引き取ったんですよ。ま、おかげ様で食い扶持が減って今月すでにピンチなんですけどね。」

「うーん、でしたらモデルとかやってみてはいかがですか?彼女かなりスタイルいいみたいですし、私の事務所ってモデルを募集しているんですよね。あ、まだ名刺出してませんでしたね、私こういう者です。」

渡された名刺の所属部分にはモリプロと書かれていた。モリプロと言えば毎年有名女優を輩出する大手の事務所だ。

「も、モリプロ!?」

「何だ?モリプロって。」

「モデルや女優の世界では一般人ですらその名を知っているぐらいの有名事務所だよ。」

「へ~、そんな事務所にお笑い芸人か~。」

「いや、普通にいますけど。」

「ふ~ん、そ。」

「社員に養われる社長、哀れだな。」

「イヤまだ決まった訳じゃ…」

「…モデルねぇ、最低限のお金は必要だと思うけどそこまでして稼ぎたいとは思わないというか。ありすぎても結局つけあがってくる奴らが増えるだけなのと、それにまだ学生生活も一年弱は残ってるもの。」

「やはりってーか何つ―かずいぶんとお金について達観してるな…」

「当たり前じゃない!両親が死ぬまではあれだけすり寄って来た連中が今じゃ視界にすら入れてこないヤツらがほとんどだもの!どうしたってお金持ちが得だとは思わない!」

「その意見はごもっともだけど今のこの極貧状態でおんなじコト言えんのか?」

「ぐぎゅるるる~。」

丁度のタイミングで四人(二人と二匹)のお腹が鳴った。

「あの、大丈夫ですか?」

「ショージキ、ダメだな。だからもうここは全員地獄行きしかないゼ☆」

「オイちょ、唐突じゃねーか!」

「っせーな、一刻も早く依頼済ませねーとこっちがマジモンの地獄行きになるっつーの。」

「まだ依頼内容も聞いていないのだろう?大丈夫か?」

「まー、何とかなんだろ。」

「ズウウウン!」

「…ん。何だ?この地獄は。ドレイたちが柱に付いた棒を六手に分かれて回してるゼ☆」

「その手のマンガでありがちな光景じゃんか。ひでぇな。」

「しかもこの棒回してんの、みんな芸人っぽいゼ☆」

「上にどう繋がっているかは分からないけど、おおかた事務所に搾取された芸能人たちってトコロかしら。」

「はわあああああ!え?ここどこ!?」

「どうやら依頼人がお目覚めのようだゼ☆」

「おい、ブリティッシュ木村!あめんぼタロウ!かまぼこ!光り物三昧!何でこんなトコロで棒押してんだよ!何かの撮影かドッキリなのか!?」

「芸人のクセにリアクション面白くねーな。」

「それに言っちまうと呼んでる奴らがもう名前からして売れてなさそう感すごいしな。」

「なあ、一体どうなってんだ!?」

「ここはジョイ!オマエの不満が作り出した地獄だよ。要するにここではオマエの不満が具現化してるってコトだ。」

「ジョイって…もしかして私のコトですか?」

「そうだ。上新 樹希だから略してジョイだ。こうやって呼んだ方が呼びやすいし覚えやすいからな。勝手ながら呼ばせてもらうゼ☆」

「取り乱してすいません、それとここは…間違いない、私が今頭の中で抱えている悩みと全く一緒だ。というコトは…」

「そこの階段を上るのか。」

「何となくだけどこの先がどうなっているかはオイラにもわかってきたゼ☆」

ジョイの地獄2F

「…やっぱり、ここは芸能界の序列が完全に再現されている。さっきの階は私みたいな売れない芸人、そしてここはやや売れの駆け出し芸人。」

「…となるとやっぱり上に行けば行くほど立場が上になるってコトかしらね。」

「だろうな。」

「まあそれはいいとして、ここを探索する前に依頼内容を聞くのが先だゼ☆何せ依頼内容が「売れないヤツ等を報われるようにしてほしい」か「暴利貪ってる上のヤツ等をぶっつぶしたい」かでやることが全く違ってくるからな。ちなみに後者の方が報酬はハズむゼ☆」

「…報酬って、何だ?こんな困ってる人からカネを貰うなんてもっての外だろ?」

「いいや、そうじゃなくってちゃんと方法がある。仮にもここはバケモンどもが飛び交う「地獄」だからな、そいつらから金目の物を脅し取るかスるかすればいい。」

「オイ、脅し取るかスるって完全に悪いコトじゃねーか!」

「っせーな、地獄にいるようなバケモンなんだからロクな奴なんかいねーんだよ。例えば、何十人も人を殺したとか人を騙しに騙してカネをブンどったとかな、そんなクズからちょっとカネを頂戴するだけなんだから何の問題もねーだろ。こんなカネをやるぐらいのコトなんか罪の償いとしちゃ当然のコトだゼ☆ま、いつかどっかから報いを受けるかもしれねーけどな。」

この時俺は確信した。コイツは地獄で生きてきたヤツだった、俺たちとは住んでいる世界が違うんだ。だからコイツの歪んだ正義感はきっと今までをこうして過ごしてきた結果なんだろうと。

「さあ、どうすんだカリスマ?」

大人は自分の決めたことに責任を持たなきゃいけない。俺だったら今までの生活から抜け出したコト、会社の経営を始めたコト、人を一人養うようになったコト、そして今は自分の納得いかない方法で収入を得ようとしているコトだ。でも今までのコトを決めてしまった以上はもう後戻りできない。仮に逆らったとしたらこのまま全員破滅するかキャン自ら俺に手を下してくるかのどっちかだろう。…何だ、上には逆らえないってか?今の社会と何ら変わんねーじゃんか、クソッタレ。俺は歯を食いしばった。

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