アスノソラヘ 第6周

「オンユアマークス

…パァン!」

こうして俺は5000mという名の荒波に巻き込まれた。ライディーンと、シズクと呼ばれていた二人はどうやら同じ800mを走る者としてお互いをいい意味でライバル視して仲良くなったようだ。まあ初めてのトライアルに、表に出さないながらもガックガクに緊張していた俺は時間が経つにつれて口数が増えていく二人とは対照的に減っていた。号砲がなるまでは緊張しすぎて死にたくなるぐらいだったのに、スタートしたらしたで緊張感は段々と吹き飛んでいき、ついには周りを認識するぐらいの余裕まで出てきた。

第6周

ナンセンス

今走っているのは俺を含めた15人で、俺以外はみんなユニフォームを着ている。5000mだからこの400mのトラックを…えっと、12周半か、まあ何とかなるだろ。ライディーンからは「スタートだけは絶対に前に出ろよ!」とクギを刺されていたから、それなりに前の方(4番目)に着くことができた。だけど、一つだけ問題がある。それは、…目標タイムとかペースをどれぐらいにすればいいかが全く分からない!!

…よし、分からないしとりあえず一番前に出るか。

「66、67、68。68ィ!?」

そうこうしているうちに最初の一周(400m)を通過したようだ。ライディーンがラップタイム(周回ごとのタイム)を伝えてくれたはいいけど…速いのか遅いのか分かんねーんだっつの!…とはいえこの中で一番前にいれば少なくとも遅すぎるってことはないだろうからな、このまま行くか。

「…どうします、アイツ。俺今アズミンが最初の400を68秒で通過したように見えたんスけど。」

「僕の目からもそう見えた気がするよ。」

「…なんだ?あの色白ノッポは。」

「でもあのペースで行ってるってことはかなり速いんじゃ…」

「同好会なのにか?速ければ普通に部の方に引き抜かれるだろうけどな。」

「んじゃ、ただのアホか。」

「だなー。」

「ハハ、…終わったな。確かにアズミンにスタートの瞬間は前に付けって言ったけどその後はペースを保つためにも飛ばすのは200ぐらいまでにしとけって言ったはずなんだが。アズミンのヤツ、バレバレの緊張隠そうと必死になってたかんな~、もしかすっと俺からの忠告はいくつか聞き漏らしてたのかも知れねぇや。」

「これじゃ完走するのが御の字ぐらいになりそうだな。」

「そっスね。」

…よし、今のところはうまくいっている。ライディーンがペースについて何も言わなかったってことはきっと丁度いいペースだってことだろうからこのままでいけば問題なさそうだな、呼吸もまだよゆ…

余裕ねーわ!!まだ600ぐらいしか走ってねーのにもう呼吸が荒いんだもん!絶対ェーおかしーわこんなん!確かにラスト1000は消耗しきった後の気力で勝負だって言ってたけどこんなんじゃ気力もへったくれもねーよ!!

…しゃーねー、ペース落とすしかないか。

「二周目、90、91、92!おせーよ!!」

何で今度は遅過ぎんだよ!ちょっと足の動き遅めただけじゃん!途中で3分の2ぐらいの人数に抜かれた気がしたけどさ。

「そういえばペース走やってなかったな。…となるとさすがに初心者にペース取りはムリなんじゃないか、ライディーン。」

「…そっした。」

「そろそろアズミンが1000mを通過しそうだ、こっち側(1200m地点)に戻ってきたら何てアドバイスしようかね。」

「っと、17分切りを狙わせるんならあそこのキンパツに黄色い「気力こそが勝負の決め手だぴょん」とか書かれたナンセンスなTシャツ着た奴についてくのがよさそうっスね。」

「そうだな。さて、そうこうしているうちに1000mを通過するぞ。」

「3分20、21、22、23!」

「なんとか持ち直せそうかな。」

「っスね、こっち来たら外側で併走して声かけますわ。」

「OK、そろそろ先頭が1200を通過してくるな。それなりの強豪校っていうだけあってなかなか速いや。」

「おっ、来たなアズミン!よっし、ラスト1000まではちょっと前にいるキンパツに付いてけ~!」

金髪金髪、…ん?アレか?あの「気力こそが勝負の決め手だぴょん」って書かれたウサ田ピョン吉のハイセンスな服着たヤツか!ようし!

「タッタッタ。」

な、なんなんださっきから急にペース上げたり落としたり、挙句の果てにはこのハイセンスでカッコイイボクに付いて行こうだなんて…全く、ボクも罪だな。

「おや、サイコーの5000mの銀髪さんはトレビについて行こうとしているようですが。」

「番野さん。…というか、トレビ?」

「ああ。あの金髪の彼、緑川 十麗美(みどりかわ とれび)って名前なんです。すごいでしょう、一体こんな名前を付けた親はどういう神経をしているんでしょうかね。それと自称ハイセンスを愛し、ハイセンスに愛されるとかどうとか、完全に中二病ですね。…まあそれはどうでもいいとして一年のクセしてなかなか速くてね。確か5000のベストは16分14秒とか言っていましたっけ。…ところでそちらの彼は一体何なんですか?さっきからイマイチよく分からない、彼風に言えば「ナンセンス」な走りをしていますけど。」

「ああ、アイツ5000初めてなんスよ。とりあえず17分切りを目標にさせるつもりなんスけどね。」

「…なるほど、だとすると決着はすぐにつきそうですけどね。そろそろ3000mの通過ですから実力差がある以上は段々と距離が離れて…ない!背後にピッタリくっついている!?」

「経験の差だけで実力差を決めちゃうなんてのも、ナンセンスじゃなくって?部・長・さ・ん。」

「えっと、3000mの通過が…9分56秒か。」

「正直ただのメンド臭がりだと思ってたけどやるときはやるじゃねーか、アズミン!」

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