アスノソラヘ 第9周

「だー!チキショウ!どうしてこう、練習でも全く勝てねーんだよ!つーかいきなり400mインターバル10本60秒ペースとか足壊すわ!」

「短期の強化合宿みたいなモンだろ、こんなん。」

「うるせー次は絶対勝つ。」

「お、言ったな。」

「テメーに勝つまでは絶対帰んねーから!!」

「オイオイ、一生帰れねーってのそれじゃあ。」

「うっせ!」

第9周

フォーム

「…アイツは相変わらずだし心配はなさそうか。ただここの部を見てウチに足りないモノっていうのが見えてきたな。全体的な実力もそうではあるけど、それよりも部員が長距離に傾き過ぎている!!」

あっち(楽天寺高校)の番野とかいう部長は100mと200mだったし中長距離にもあのシズクとか言うヤツを始め、なかなかのメンツがそろっている。棒高跳びやハンマー投げとかの環境が揃っていないと始められない競技も網羅している以上、あれならインターハイに出ても個人、学校単位の順位ともども上位に食い込めるポテンシャルがあるな。

「…戻って来ないかなぁ、晴間。」

所変わって5000m組(2時間ジョグ)

「ね、ねぇ君!」

「あっ、キミは…」

「俺さ、ずっと背中にくっついてた安曇 刻夢って言うんだけどさ、どうやったらそんな速くなるのか教えてよ。あとそのTシャツ、ウサ田ピョン吉?どこで買ったの?」

話しかけたそいつは少しためらいながらもこう答えた。

「なるほど。このボク、緑川 十麗美のすんばらしい実力とTシャツが気になるのか。ならば、教えて差し上げよう。」

「やった!」

「う~む。まず走りに関して言うと、ボクが最も心掛けているのはフォームを崩さないことかな。美しくあるためには常にムダのない動きに気を遣う必要があるからね、フォームをきれいにするのはその第一段階ってワケさ。」

…ずっとコイツの後ろで見ていたから分かるけど確かにコイツのフォームは素人目から見ていてもキレイだった。ブレない体幹に常に前にまっすぐ出る足、大きく振りそしてムダなく力を伝達するような腕、少なくともこれらは俺の意識がもうろうとしている中でも常に目に入っていた。それに特に、俺を置いてけぼりにしたラスト前ではそれはより顕著に見えた。

…サイコーの銀髪の彼はやはりトレビと接触しましたか。トレビはここの陸上部の中でもトップクラスにきれいなフォームをしていますからね。今でこそ、そこそこぐらいの実力に落ち着いてはいるものの、何か一つ、ライバルへの闘争心でもいいし、フォームの向上でもいい、剝けるような皮があれば一気に化けることでしょう。

「あとはこのTシャツなんだけど、コレ非売品なんだ。実はボクの家はスポーツ系のアパレルブランドを経営していてね、コラボTシャツの着心地を試させてもらっているんだ。」

「…何だ。がっかり。」

「ボクの美しさにはかなわないけれど、このTシャツはそのうち販売するはずだからそこまで気を落とすことはないさ。」

「キラーン。」

励ましのグーサインをしたトレビの歯は、瞬間的にまぶしいくらいに光っていた。

5000mは高校陸上で最も長い距離だ。他の競技と比べても、特に最後まで体力を温存することが重要になってくる。当たり前だけど、体力を温存するためには体力を使わずになるべく速く走らなきゃならない。そのためにはフォームを崩さないことであったり、さっきのように風よけを作ったりと立ち回りを工夫する必要がある。いわば、この5000mという競技は陸上界の

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